アニメの最新PVが公開された株式会社マジルミエの違和感について思うこと

株式会社マジルミエとは何なのか

 ジャンプラ読者には説明不要だろうとは思うんだけど、マジルミエもジャンプラも知らない人向けにざっくり説明する。ジャンプラはインターネット版ジャンプとも言うべきウェブ漫画誌、少年ジャンプ+のことで、株式会社マジルミエはそこで連載している魔法少女モノの漫画だよ。

 その世界では魔法少女が職業として成り立っていて、しかもそれを生業とする企業が数えきれないくらいに存在する。今の世界じゃとても実現できそうにないくらいのテクノロジーがあって、魔法少女はプログラムによって変身し、生成された魔法を使って怪異を倒すという内容。

 アニメでやるであろう1部は就活中の主人公である桜木カナはとんでもない記憶力と並外れた適応力や発想力を使って、魔法少女として奮闘する……というようなもの。就活がうまくいかなくて困っていたらなんだかんだで――まあ、知らなかったらぶっちゃけ漫画の1話を読めばいい。

[第1話]株式会社マジルミエ

 ここからは1話を読んだ前提で書くんだけども、1部の途中まではこのノリが続く。就活が失敗続きだったのに高給取りの魔法少女になり、特技を生かしつつ時には失敗もしつつ魔法少女として結果を残す。ヒーローとして認知されることもなく、優秀な社員として成長していくってわけ。

違和感が凄いPV

 だからまあ、なんというか割と最初の方は絵柄こそ可愛いものの泥臭い成長物語なのよ。カナちが成長して頼れる人材となって、怪異以外の色んなものとも戦いつつ大きな思惑に巻き込まれて……という風に意外とザ・ジャンプな展開なのね。それなのに見てよ、このPVはなんなの。

 言い方は悪いけど、ブラック企業がホワイト企業を装ってアットホームさを売り出しているような雰囲気なのよ。妙にきらきらしてて、日常系に魔法要素でも加わったのかな? って印象。漫画を読んでいる私の目線だと違和感が凄くて、これを見て初めて知った人はどんな想像をするのかなと。

 魔法少女モノなんだ。これが頼れる先輩なんだ。ああ、この子が主人公ね。とまあそこまではいいさ。間違っちゃいないさ。想像したイメージと剥離するかもしれないけど。問題は表現。先述したキラキラ感。そんでもって文字。テロップ。やけにポップな表現。コレ。

7559015e3b4c17b34ae9e510c9972ef2-1024x576 アニメの最新PVが公開された株式会社マジルミエの違和感について思うこと

 この表現がどうも違う。違和感が凄い。それは2部がシリアス寄りだからより強く感じるのかもしれない。でも最初からこの漫画にはテーマがあって、ギャグに見える社長の格好にだって意味がある。でもこのPVからは何も伝わってこなくて、表面上の設定しか見えてこない。

 ただ、あれだけ色々とアニメ化しているジャンプ作品で悪い意味での適当なことをするとも思えず、個人的に気になったのは違和感が意図的なものなのかどうかというところ。そして、それが意図的だとすれば何をミスリードさせて、どこまで表現するのかというもの。

アニメ版株式会社マジルミエが企んでいるのは何か

 魔法少女モノのアニメで驚くような演出があったものといえば、もう随分と古い作品になってしまった『魔法少女まどか☆マギカ』がある。ネタバレは避けたいので言及は避けるけど、この作品はえらく退屈な雰囲気のまま進み、ある演出から一気に視聴者を引き込んだ。

 もしかしたらマジルミエも似たようなことをやりたいのかと思って考えてみたものの、最初は明るいコメディのノリでバディ物として楽しませて、どこかで起承転結の転をどかんと入れ込みたいのだとしたら1部のラストまで続けないと成立しない。しかし1クールや2クールでは現実的じゃない。

 それにそこまで引っ張ってからの転換だと視聴者も飽きてしまう。なんならそこに至る前の段階で興味を失っている恐れがある。異世界転生モノが蔓延っている今の世の中なら、ある程度ストーリーがしっかりしていたら受けるだろう……という安直な考えだとしたらどうしよう。

 もしくは、このティザーだけが特殊で本公開直前でもっと泥臭くなるのかもしれない。可愛い女の子で釣って、熱いストーリー展開で引き込む。いわばこれは撒き餌ではないかという予想もできる。それならまだ本編自体はここまできらきらしていない可能性もある。

 いずれにせよ、現時点での情報だけだとアニメ化が不安でしかないのは私だけだろうか。ストーリーの連続性もなく、女の子たちがきゃっきゃしながらたまに苦労して、怪異を倒す。どこから見てもとりあえず楽しめる金太郎飴のような展開を一話ずつ見せられやしないかと不安が残る。

ファンの一人としてアニメ版に期待したいこと

 商業的に成功して、アニメとして面白いという感想が多ければそれは成功と言えるのだと思う。でも私は、マジルミエの持つ世界観やそれぞれのキャラクターが持つ設定、生きてきた背景。全てが良質だからこそ好きになったんだと思うし、単なる魔法少女モノ+お仕事モノに終わって欲しくはない。

 アニメだけを見て「ああ、そういうものもあったね。結構面白かった」という感想で記憶から薄れていってしまうのは非常に悲しい。個人的にはこのマジルミエも、雰囲気やストーリー的には『鬼滅の刃』くらいのイメージでも全く問題がないと思う。

 バトルシーンはしっかりと戦って、日常パートでは適度なギャグも挟む。変わらない日常が徐々に大きなうねりへと巻き込まれていき、それぞれの成長も描かれる。私はそういう泥臭くて熱いアニメになって欲しいのである。

 面白くて原作も読みたくなる。そんなアニメになってくれることを心から祈っている。

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