キャバクラっていうのはね、夢を売る商売だと思うんだ。決して体を触らせることもなく、心を許すわけでもなく、ただただ客を喜ばせる仕事。男どもは可愛い女の子と話せてハッピー。女の子は稼げてハッピー。女の子を触りたいって人は最初からそういう店に行けばいいんだ。
そういうお店の方が結果的に安上がりだし、キャバクラで女の子を触ろうとするのはダメ人間なんだよ。いやらしい目で見るのはセーフだし、いやらしい妄想をするのもセーフ。でも無理やり触ろうとしたり何かを期待してお金をつぎ込むなんてのはどうしようもないってわけ。
私はそういう男を軽蔑してるからね。
前回の体験日記はこちらから。
すっかりキャバクラ大好きおじさんと化した杯人。ハイトって名前らしいけど、キャバクラに行くかギャンブルをするかしか選択肢がない今の彼はもはや廃人。ハイトではなくハイジン。私が操作してるんだけどね。彼は私で私は彼だから、もはや同一人物。これは私の物語。
つまり花奈ちゃんは私に惚れてるってこと。合ってるよね。だいぶ心を許してくれるようになったのかな。花奈ちゃんは酔っぱらうようになったよ。そりゃ酔っぱらったら方言も変な日本語も出てくるってなもんよ。いいよね、普段見ない姿って。ギャップは史上最高のスパイス。
ほら見てよこのデレデレっぷり。完全に惚れてる。まあだからといってこっちからアプローチを掛けるほどでもない。いつも通りお酒を飲むついでに女の子と会話を楽しむ。それだけでいい。
これは違うのよ。アプローチとかじゃなくて、不埒な理由なんてものもない。紳士だからね。みんなも分かるでしょ。ただ女の子に新しい下着を履かせたかっただけ。
プレゼントが嬉しかったんだろうね。初めてチェキを撮らせてくれたよ。チェキの最中はカメラを持って上から撮ったり下から撮ったりも自由自在。つまり下からスカートの下に広がる宇宙を眺めることだってできる。ほら、あれがデネブアルタイルベガ。どれがどれだよ。
軽いノリで70,000円近く使ってその日はお開き。チェキという初のイベントにわくわくしながらまた訪れると、花奈ちゃんが私を見て頬を染めながら言った。「個室に行こっか」
は？
ひ？
ふ？
へ？
ほああああああああああああああぁあああぁぁあぁぁあぁあああああああああああっ！！！
これで33,300円っておかしくない？
逆ぼったくりだよ！
……ふう。今日は本当にありがとね、花奈ちゃんがどれだけ私のことを思ってくれているのかがよくわかったよ。またギャンブルでお金を増やしてから来るよ。だから待ってて――
花奈ちゃん、それってもしかして。はっ……何か聞こえる。『桜舞う並木……夢見たその笑顔……儚げな未来……いくつかの過ち……歩んで来た道……悩んでたあの日々――』これはまさか、rinoの『Small Cherry～promised bell～』じゃないか？！（幻聴）
勝ち確BGMが流れたんだったら仕方ない。行くよ。君とどこまでも。
……ほ、ホテルは？
次回、『個室に入らずんば腰つきを得ず』へと続け。
今日の豆知識
女の子が酔っちゃったって言うときは酔ってないとき
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